不動産売買契約書の特約について


 契約の内容は、売主と買主の自由な意思によって定められるべきというのが、法律(民法)の考え方です。そのため、原則として、売主と買主の合意により、売買契約書のひな型と異なる特約をすることができます。

 しかし、公の秩序に関する規定に違反する内容の合意をすることはできません。いくつか例を挙げてみます。

〇公序良俗に反する合意の例

 ・公序良俗に反する合意は、無効とされています。

 ※不動産の売買契約の例ではありませんが、例えば、覚せい剤の売買契約は、公序良俗に反するので無効です。

〇消費者契約法により無効とされる合意の例

 ・消費者契約法は、事業者と消費者が契約する場合に適用される法律です。消費者契約法では、事業者の賠償責任を全て免除するような合意は、無効とされています。

 ※不動産の売買契約を例にとると、買主である消費者が売主である事業者契約不適合責任や債務不履行責任を全て免除することが契約書に特約として規定されていても、その特約は無効となります。

〇宅建業法により無効とされる合意の例

 ・宅建業法では、宅建業者が売主で非宅建業者が買主とする契約を締結する場合に、宅建業者に有利な一定の合意を無効としています。

 ※例えば、宅建業者が売主である場合に、契約不適合責任を負う期間について特約をするときは、目的不動産の引渡しの日から2年間よりも買主に不利な(つまり短い)期間の特約が無効になります。また、宅建業者が売主となる場合には、代金の額の20%を超える手付金を受領する合意をした場合には、20%を超える部分についての合意が無効になります。

 以上に挙げたものは、公の秩序に関する規定に反する合意のごく一部にすぎません。

売買契約書に特約を設けたいときには、その特約について、相手方との合意ができているどうか、合意ができているとしても、その合意は、公の秩序に関する規定に反しないかどうかをよく検討する必要があります。

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